「新人がまた辞めた」その連鎖を断ち切る3つの視点~新人定着の最初の山場は、配属から1週間~

人材定着

「また辞めてしまった」

採用しては辞め、採用しては辞める。その繰り返しに疲れている方は少なくありません。

問題は本人の意識や性格ではありません。多くの場合、原因は受け入れる側の職場環境と関わり方にあります。

人材不足の時代、育成と定着を分けて考えるのがポイントです。まずは、明日以降も元気に出社してもらうことを軸に考えていきましょう。

管理職としての経験及び出講先で見聞きしたことをもとに、新人定着を阻む3つの視点と対策を解説します。

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「最近の若い人はすぐ辞める」とよく言われます。しかし、辞める前にはほとんどの場合サインがあります。そのサインの多くは、配属直後のわずかな体験の中に潜んでいます。

その歓迎、新人に届いてる?

新人が職場に来て最初に感じることは、意外にもシンプルです。「自分はここに歓迎されているのか」ということです。

先輩から挨拶や自己紹介がない、書類や制服の準備ができていない。それだけで新人の目には「自分はここに必要とされていない」というメッセージとして映ります。悪意があってそうしているわけではないと思います。しかし、そのような些細にも思えることにも新人は見ているものです。

歓迎されているという実感は、特別なことをしなくても作れます。まずは、次のことから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 先輩側から先に笑顔で挨拶をする。
  • 先輩から自己紹介する。
  • 書類や制服などもれなく準備しておく。
  • 指導担当者をあらかじめ決めておく。

先が見えない職場に、人は残らない。

新人が早期に辞めるもう一つの大きな理由が、「見通しの持てなさ」です。以下のような状態が重なると、新人は「この職場で自分がどうなるのか」が見えなくなります。

  • 行き当たりばったりの指導が続く。
  • いつまでに何ができるようになればいいのか、期待値がわからない。
  • 聞く人によって言っていることが違う。
  • 入社時研修で教わったことを、先輩社員が実行していない。
  • 「研修で学んだことなんて役に立たない」という言葉が先輩から聞こえてくる。

不安は、わからないことから生まれます。逆に言えば、先の見通しが持てれば、多少の困難があっても人は踏ん張れます。「今は大変だけど、〇ヶ月後にはこうなっている」というイメージが持てるかどうかが、定着を左右する大きな分岐点になります。


「よかれと思って」が、新人を追い詰める。定着を阻む3つの落とし穴

新人が定着しない職場には、共通した構造があります。悪意があるわけでも、無関心なわけでもなく、むしろ「よかれと思って」やっていることが、裏目に出ているケースが少なくありません。ご自身の職場を振り返り、当てはまるものがあれば改善しましょう。

落とし穴1 その「当たり前」、新人に伝わってる?

「これぐらいわかるだろう」「普通はこうするものだ」という空気が、知らず知らずのうちに職場に漂っていることがあります。口に出して言っているわけではない。それでも新人には伝わります。

この「当たり前」には2つの種類があります。一つは、その職場・組織の中で培われてきた独自の文化や慣習。もう一つは、世代や時代によって異なる価値観です。

かつて「24時間働けますか」という言葉が一つの常識として語られていた時代がありました。しかし今は、残業を極力しないことを当たり前とする感覚が若い世代を中心に広がっています。どちらが正しいという話ではありません。ただ、「当たり前」が世代によって根本的に違うという事実は、受け入れる側が意識しておく必要があります。

時代が変わった以上、受け入れる側が適応していく必要があります。これは、職場がこれまで大切にしてきたものをすべて捨てようということではありません。時代の変化に合わせて見直すべきものは見直しながら、新人への伝え方・見せ方という「入り口」を変えていくことが、定着への第一歩になります。

落とし穴2 何が正解?教えすぎ、教えなさすぎ、どっちも辞める。

かつては「背中を見て覚えろ」「見て学べ」という指導スタイルが主流でした。早く育てたいという思いから、一度に多くのことを詰め込む指導も少なくありませんでした。

しかし、それで新人がパンクして辞めるという事態が続きました。その反省から、今度は「辞めてほしくない」という心理が働くようになります。その結果、少しずつしか教えない・注意をしないという状況が生まれます。ところが、今度は新人が仕事の手応えを感じられずに辞めてしまいます。

「教えすぎて辞める」「教えなさすぎて辞める」。現場でこの板挟みに八方ふさがりを感じている方も多いのではないでしょうか。

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問題は「たくさん教えるか、何も言わないか」という量や強度の話ではありません。そもそも新人に見通しを持たせているか、そしてそこに納得感を持たせているか、という前提の話です。何をどれだけ教えるかより先に、「この職場でどうなっていくのか」を新人自身がイメージできているかどうかを確認することが、定着への第一歩になります。「当たり前にわかるだろう」は危険です。

落とし穴3 その武勇伝、新人のやる気を奪っていませんか?

「この仕事を続けると給料が上がる」「裁量権が増える」「やりがいを持てるようになる」。こうした将来像を伝えることは大切です。しかしここに、見落としがちな落とし穴が2つあります。

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一つ目は、そもそもその「結果」が新人にとって魅力的かどうかという問題です。給料・裁量権・やりがい。これらを重視する人がいる一方で、現代はそこに価値を置かない人も増えています。全員が同じものに動機づけられるという前提自体が、すでにズレているのかもしれません。

二つ目は、結果に魅力を感じていたとしても、そこに至るプロセスがネックになるケースです。先輩社員が「先月またサービス残業が何時間もあってさ」「この前も休日出勤してしまったよ」といった話を何気なくしていることはないでしょうか。語っている本人に悪意はありません。しかし新人の耳には「自分もああなる」という未来像として届きます。

結果を魅力的に伝えると同時に、そこに至る道筋や身近な将来像である目の前の先輩の姿をどう見せるかを意識することが、定着率を左右します。


新人が「ここで続けたい」と思う職場は、最初の1週間で作られる。

新人を定着させるために、特別な制度や大きなコストは必ずしも必要ありません。初日の前の準備から、初日当日、そして2日目以降の関わり方を少し変えるだけで、新人の受け取り方は大きく変わります。

初日が始まる前に、定着は決まっている。

初日の印象は、その後の定着を大きく左右します。そして初日の印象は、初日が始まる前にすでに決まっています。準備には2種類あります。

モノの準備

  • 書類・マニュアルを揃えておく
  • 制服・ロッカー・下駄箱を事前に用意しておく
  • 貸与PC・社用スマホなどをすぐに使えるようにしておく など

新人が来てからバタバタと準備を始める職場があります。悪意はないと思います。ただ新人の目には「自分が来ることを想定していなかった=歓迎されていない」というメッセージとして映ります。

人の準備

  • 先輩が先に笑顔で挨拶をする。
  • 先輩から自己紹介をする。
  • 新人が自己紹介できる時間・場面を作る。
  • 先輩が他の社員に新人を紹介する。

モノと人、両方の準備が整ってはじめて「あなたが来るのを待っていた」というメッセージが新人に伝わります。

初日の退勤後の表情まで、設計する。

初日は新人にとって、緊張と期待が入り混じる特別な一日です。まず朝一番、先輩社員が率先して笑顔で挨拶し、温かく迎える姿勢が新人の緊張をほぐします。「準備しておいたから当日はいい」ではなく、実際にその場で迎える姿勢が大切です。

また、やりがちなのが、定時になったら「お疲れさま、もう上がっていいよ」とそのまま帰すことです。初日の新人は、わからないことや不安を抱えたまま一日を終えています。それを抱えたまま帰宅させると、家に帰ってから不安が膨らみます。

代わりに、定時の少し前に「1日目の振り返りの時間」を設けましょう。

  • 今日感じた疑問や不安を聞き出す。
  • 「わからないことはいつでも聞いていい」という空気を言葉にして伝える。
  • 明日の予定を簡単に共有する。

初日のゴールは、新人が家に帰ってから職場のことをふと思い出してニヤッとすること。その退勤後の表情まで演出することを意識して、初日を設計してみてください。

毎朝5分が、定着率を変える。

初日を乗り越えても、新人の不安はまだ続いています。2日目以降は毎朝、「今日はこれを教えるね」とすぐ始めるのではなく、まず前日の振り返りから入りましょう。

  • 昨日感じた疑問や不安は残っていないか
  • 昨日教えたことはどこまで理解できているか

不安を持ち越させないこと、そして理解度を正確に把握すること。この2つが目的です。確認が終わったうえで、その日の予定と到達目標をすり合わせます。「できている・できていない」の認識はお互いにズレが生じやすいため、丁寧に言葉にして確認することが大切です。

週に一度振り返りの時間を設ける場合は、新人本人が話すことをメインにしましょう。指導担当者が一方的に話しすぎると、新人は「自分の話は聞いてもらえていない」「大事にされていない」と感じてしまいます。本人が自分の不安や迷い、戸惑い、疑問を口にできる場があること。それ自体が、新人の安心感につながります。


まとめ 定着は「育て方」より、まずは「迎え方」

育てることと、定着させることは、別の話です。今の時代に必要なのは、この2つを切り分けて考える視点です。

かつては辞めてもすぐ次の人材が入ってくる時代がありました。しかし今は、一人が辞めると次はなかなか入ってきません。無理に育てようとして新人がパンクして辞めてしまうことほど、もったいないことはありません。

まずは定着を図る。その上で育てる。この順序が、今の時代には必須のアプローチになっています。

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ただし、これは「育てなくていい」「何でも許せばいい」ということではありません。大切なのは順序です。「まず定着、その上で育てる」。この考え方を職場全体で共有することが、定着率を上げる最初の一歩になります。

新人が明日も元気に出社してくる。その当たり前の積み重ねが、育成の土台になります。縁あって、せっかく入ってきた新人たちです。育成にかけた苦労を活かすためにも、本稿が参考になれば幸いです。

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